【壁ドン企画】簡単にはいかない
社会人になって、ちょっと仕事を任されてきた大人が集まると、上司の愚痴と仕事の不満が爆発する。
それが気の知れた幼馴染になればなおさら。
明日が休みだからって、終電も見送って、同棲してるというコウの家に4人でなだれ込んだ。
毎朝おいしい味噌汁を作ってくれる彼女が見たくて、私も男ばかりのメンバーだったけれど構わず一緒に押しかけた。
当初の名目である彼女拝見も忘れて、懐かしいアルバムを開いているうちにみんな服を着たままその辺に転がって寝てしまったのが最後の記憶。
一眠りして起きるとちゃんとベッドに寝ていた。
コウが気を利かせてくれたのだろうか。
昨日飲んだメンバーでそんな紳士はいなかった気がするが。
慣れない自分以外の匂いに包まれていても、意外と心地よい。
そのまま二度寝のコースもとても魅力的だったが、人様のベッドを占拠しているのを思い出して起き出す。
見覚えのない、シンプルな部屋。ますますがさつなコウの性格と離れる。彼女がいるとこうも変わるものか。
部屋には私意外誰もいない。まだ寝ぼけている身体で部屋から出ると、3人がリビングで転がっている。一応毛布や布団をかぶって。
味噌汁のいい匂いが鼻に届いてキッチンに目を向ける。
例の彼女かと思ったら、エプロン姿の男が鍋をかき回している。
ということは、3つの転がっていた一人が彼女で、背格好的にも、自宅に招待してくれたコウだと思って、背中を思いっきり叩いた。
「おはよう、コウ」
「どわ、危なっ!」
聞き覚えのない声にびっくりして慌てて離れる。
「おはよう、なっちゃーん。あーんど、たっつん」
背後から掛けられた声に安堵を覚える。
こっちの声が予想してた声。
「本物のコウ~」
目の前の知らない男に背を向けて全速力でコウの背中に隠れてしがみつく。
コウとはただの幼馴染だ。
付き合いが長いから許される距離感。
「うわぁお、朝からサービスいいねぇ、なっちゃん」
「おい、コウ!女は連れ込むなっつってただろう」
「一応女だけど、俺たちにとっちゃ女じゃないし。4人も一緒じゃ、なんも出来ないって」
「それならそれで、連絡しろよ。帰ってきたら死体がゴロゴロ転がってて、一人は女って犯罪かと思ったぞ」
「ごめーん、たっつん」
あっけらかんと謝るコウに対して、神経質に眉をひそめて『たっつん』は味噌汁に向き直る。
「えっと、『たっつん』さんというのはどちら様?」
流れる会話についていけず、コウの服を引っ張る。
「たっつんはシェアハウス相手。言ったじゃん、同棲してんのー、俺」
「誤解を生む言い方すんな。『なっちゃん』さんも大胆だね、男どもと一つ屋根の下」
「だって、コウが同棲って、昨日の話の流れじゃおいしい味噌汁作ってくれる彼女がいるって!」
「ええ?俺がいつそんな話したのさぁ。彼女はいるけど、同棲はたっつんとしてるの」
当たり前のように言い返してくるコウの頭に一発こぶしをお見舞いして、たっつんさんに頭を下げる。
「『たっつん』さん、ご迷惑をかけて申し訳ありませんでした」
「まあ、何もなかったんだし、俺としては一瞬リア充体験したんで、それでチャラってことに」
『たっつん』さんは顔を赤らめて、斜め下に視線を逸らす。ん?リア充体験って・・・
「な、何かしました、私・・・?」
身に覚えのない発言に、血の気が退き、昨日の記憶をかき集める。コウの服を掴んだまましゃがみこむ。
「やだなぁ、たっつんの方が何かしてんじゃん、えっちぃ」
他人事だと思って暢気なコウの発言に『たっつん』が慌てて腕を掴んで立ち上がらせてくれる。あ、この手の感じは昨日も・・・。
「な、何もしてない、ちょっと、その勝手にベッドに運んじゃったんで。すんません。ご飯できたんでどうぞ」
二人分の食器しかなかったのだろう。家中の食器をかき集めて、ばらばらの形、大きさだが、5人分のご飯が並べられている。
「何この主婦スキルの高さ。コウ!あんたそれで毎朝おいしい味噌汁が飲めるって言ってたわけね!」
「だから、そう言ったじゃん。何も間違ったこと言ってない!わ、なっちゃん暴力反対!」
二人で騒ぎ始めると残りの二人もそれぞれひどい顔で置き出してきた。
奇妙な取り合わせの5人で朝ごはんを一緒に済ませて、帰宅した。
お酒の勢いで犯した、一過性のミスだと思って丁重に謝罪を述べて、もう会わないだろう『たっつん』に永遠のさようならを言ったつもりだった。
それが気の知れた幼馴染になればなおさら。
明日が休みだからって、終電も見送って、同棲してるというコウの家に4人でなだれ込んだ。
毎朝おいしい味噌汁を作ってくれる彼女が見たくて、私も男ばかりのメンバーだったけれど構わず一緒に押しかけた。
当初の名目である彼女拝見も忘れて、懐かしいアルバムを開いているうちにみんな服を着たままその辺に転がって寝てしまったのが最後の記憶。
一眠りして起きるとちゃんとベッドに寝ていた。
コウが気を利かせてくれたのだろうか。
昨日飲んだメンバーでそんな紳士はいなかった気がするが。
慣れない自分以外の匂いに包まれていても、意外と心地よい。
そのまま二度寝のコースもとても魅力的だったが、人様のベッドを占拠しているのを思い出して起き出す。
見覚えのない、シンプルな部屋。ますますがさつなコウの性格と離れる。彼女がいるとこうも変わるものか。
部屋には私意外誰もいない。まだ寝ぼけている身体で部屋から出ると、3人がリビングで転がっている。一応毛布や布団をかぶって。
味噌汁のいい匂いが鼻に届いてキッチンに目を向ける。
例の彼女かと思ったら、エプロン姿の男が鍋をかき回している。
ということは、3つの転がっていた一人が彼女で、背格好的にも、自宅に招待してくれたコウだと思って、背中を思いっきり叩いた。
「おはよう、コウ」
「どわ、危なっ!」
聞き覚えのない声にびっくりして慌てて離れる。
「おはよう、なっちゃーん。あーんど、たっつん」
背後から掛けられた声に安堵を覚える。
こっちの声が予想してた声。
「本物のコウ~」
目の前の知らない男に背を向けて全速力でコウの背中に隠れてしがみつく。
コウとはただの幼馴染だ。
付き合いが長いから許される距離感。
「うわぁお、朝からサービスいいねぇ、なっちゃん」
「おい、コウ!女は連れ込むなっつってただろう」
「一応女だけど、俺たちにとっちゃ女じゃないし。4人も一緒じゃ、なんも出来ないって」
「それならそれで、連絡しろよ。帰ってきたら死体がゴロゴロ転がってて、一人は女って犯罪かと思ったぞ」
「ごめーん、たっつん」
あっけらかんと謝るコウに対して、神経質に眉をひそめて『たっつん』は味噌汁に向き直る。
「えっと、『たっつん』さんというのはどちら様?」
流れる会話についていけず、コウの服を引っ張る。
「たっつんはシェアハウス相手。言ったじゃん、同棲してんのー、俺」
「誤解を生む言い方すんな。『なっちゃん』さんも大胆だね、男どもと一つ屋根の下」
「だって、コウが同棲って、昨日の話の流れじゃおいしい味噌汁作ってくれる彼女がいるって!」
「ええ?俺がいつそんな話したのさぁ。彼女はいるけど、同棲はたっつんとしてるの」
当たり前のように言い返してくるコウの頭に一発こぶしをお見舞いして、たっつんさんに頭を下げる。
「『たっつん』さん、ご迷惑をかけて申し訳ありませんでした」
「まあ、何もなかったんだし、俺としては一瞬リア充体験したんで、それでチャラってことに」
『たっつん』さんは顔を赤らめて、斜め下に視線を逸らす。ん?リア充体験って・・・
「な、何かしました、私・・・?」
身に覚えのない発言に、血の気が退き、昨日の記憶をかき集める。コウの服を掴んだまましゃがみこむ。
「やだなぁ、たっつんの方が何かしてんじゃん、えっちぃ」
他人事だと思って暢気なコウの発言に『たっつん』が慌てて腕を掴んで立ち上がらせてくれる。あ、この手の感じは昨日も・・・。
「な、何もしてない、ちょっと、その勝手にベッドに運んじゃったんで。すんません。ご飯できたんでどうぞ」
二人分の食器しかなかったのだろう。家中の食器をかき集めて、ばらばらの形、大きさだが、5人分のご飯が並べられている。
「何この主婦スキルの高さ。コウ!あんたそれで毎朝おいしい味噌汁が飲めるって言ってたわけね!」
「だから、そう言ったじゃん。何も間違ったこと言ってない!わ、なっちゃん暴力反対!」
二人で騒ぎ始めると残りの二人もそれぞれひどい顔で置き出してきた。
奇妙な取り合わせの5人で朝ごはんを一緒に済ませて、帰宅した。
お酒の勢いで犯した、一過性のミスだと思って丁重に謝罪を述べて、もう会わないだろう『たっつん』に永遠のさようならを言ったつもりだった。