業務報告はキスのあとで
前途多難
今から約2時間前。時刻は、7時頃だっただろうか。
私は、半分の高揚感と、もう半分の不安に駆られながらヒールの音をぎこちなく鳴らしていた。
私が今日から働く〝OFL〟という会社に向かい、一直線で歩く。
〝one for LIFE(ワンフォアライフ)〟
〝あなたの生活にひとつ〟という意を込めて名付けられたらしいこの会社は、そこそこ有名な文具メーカー。その名のとおり、自分の手元にある文房具を見てみるとOFLの文房具が二つもあった。
知らず知らずの間に、自分の生活の中にある。そんな文房具を開発、生産するのを目標に掲げている会社らしい。
こんななんの取り柄のない私が、そんな会社に入れることになったのは本当に光栄な事だ。
私を採用してくれた方には感謝しても仕切れないな、なんて考えていると。
「最低!!本当信じらんない。この、クソ男!!」
バチンッ────
まるでモデルのようなスタイルの綺麗な女性。そんな女性に盛大なビンタをくらっている男性を目撃してしまったのだ。
「うわ」
あまりにも衝撃的なシーンに、私は、つい声が漏れてしまうほど驚いた。
だって、この街中で。この、たくさんの人が行き交うこの場所で。こんな現場を目の当たりにするなんて誰が思っただろうか。