業務報告はキスのあとで
合格通知が来た時にはもう、お母さんと泣いてしまいそうな勢いで喜んだなあ。なんて、そう遠くもない過去を思い出し温かい気持ちになっている私へ、何やらピリピリとした空気が流れ混んできた。
「あれ、平岡は?」
「いや、それがまだ出勤してなくて」
「は? またか。あいつは」
「はい……連絡もつかないんですよ」
「たく、もう。何やってんだ」
聞きたかったわけではないけれど、自然と聞こえてきてしまった会話。私は勝手に、欠員か遅刻者がいるのだろうかと予測した。
明らかに怒っている社員さんの名前は、確か、手島類(てしまるい)さん。如何にも真面目そうな眼鏡男子だ。
ただ、一般的な眼鏡男子のイメージとは違って、顔は整っているしかなりモテそうなイメージ。
「どうしましょう」
手島さんの向かいに立つ、気の弱そうな男性が呟くように小さな声で言う。すると手島さんは、イライラとした様子で髪をかき乱した。
また一段とピリピリし出すオフィス内の空気に、私の額にも薄っすら汗が浮かんだ。