業務報告はキスのあとで
ショックから頭痛さえしてくるような気がする私。
そんな私のことを構うことなく、平岡さんは相変わらずヘラヘラとしていて。
「今度から胡桃ちゃんのお家に行こうと思えばいつでも行けちゃう、ということで。僕の言うことは聞いておくように。ナンテネ」
「何が、ナンテネですか……」
「あはは」
平岡さんの冗談は、とても冗談には聞こえないような冗談だ。
だって、下手したらこの人本当に来ちゃいそうだもん……
「はあ」
「こらこら、胡桃ちゃん。溜息すると幸せ逃げちゃうよー?」
「な、も…もう!下の名前で呼ばないでください!本当に!」
住所や証明写真はもちろんだが。それ以上に下の名前で呼ばれることの方が割とキツい。
物心ついた頃からこの〝胡桃〟という名前がコンプレックスであった私。
コンプレックスである名前を、よりにもよってこの人に呼ばれるなんて。キツいどころの話じゃない。
「えー? なんで? いいじゃん、胡桃って名前」
……この人、本当に駄目だ。
ああ、神様。私はこの先、こんな人と長くやっていけるのでしょうか……