業務報告はキスのあとで

ドアノブへ手をかけ、大きく一度だけ深呼吸をする。

そして、ゆっくり、ゆっくりと重たいドアを開く。



ギィィッ



無機質な音を立てて開くドア。そして、その隙間から顔を覗かせた平岡さんの好奇心たっぷりの顔。

それから、やっぱり想像通りに着こなされているタキシード。


「か……」


つい〝かっこいい〟と呟いてしまいそうになる程の着こなしに私は最早絶句状態。


「あ、胡桃ちゃん今かっこいいって言いかけたでしょ? ………って、冗談でも言いたいとこなんだけど」

「……けど……?」


「いーや、これ……ちょっと待って。余裕で想像以上なんだけど……どうしよう」

「え? ひ、平岡さん?」


壁に手をつき、床を見た状態で何やら呟き続ける平岡さんは一体どうしたのだろうか。

私は麻奈実に目を移し、小さく首を傾げると「本当羨ましいくらいバカップルだね」と麻奈実は笑って言い捨てた

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