業務報告はキスのあとで
「あ!」
「え?」
頭を下げていた私の頭上から聞こえてきた『あ!』という大きな声。それを聞いて、私はゆっくりと顔を上げた。
すると、何故かチャラ男さんにじっと見つめられてしまった私は、条件反射のように素早く目を逸らした。
「あ、やっぱりそうだ」
チャラ男さんはそう呟いたあと「また会ったね」と付け足して笑う。
「え?」
〝また〟?
彼の意味深かつ理解のできない発言に、ぐるぐると回り始めた私の思考回路。
でも、いくらぐるぐると思考回路が回ったところで私には分からなかった。会ったのは、初めてなはずなのに。
「あの、人違いじゃ……」
「何ナンパしてんだ馬鹿野郎! 真面目に自己紹介しろ」
〝人違いじゃないですか?〟と、伝えようとした私の言葉を遮ったのは、向かいに立つ手島さん。
「こいつ、いつもこんなだから。あんまり気にしないで」
手島さんは呆れたようにそう言ったあと、私を見てにこりと優しく笑った。
「こいつの名前、平岡純平ね。一応小松さんの教育係ってことになってるから、まあ、分からないことはこいつに聞いて」