業務報告はキスのあとで
最後に付け足された〝色々と〟という言葉が少し引っかかり、意味を問うけれど
「じゃあ、また明日」
なんて言って去っていく手島さんにこれ以上聞くこともできず、私はまたパソコンと向かい合った
そして、カタカタと音を立てながら再びパソコンのキーボードを打ち始める
すると
キーボードを打ち始めて間も無く、私の背後に感じる気配。
その気配を放つのは誰なのか、考えながら仕事を続けていると「あれ、胡桃ちゃんも残業?」と、平岡さんの声。
ああ、平岡さんか……なんて、ほんの少しだけ肩を落とす私。
「資料、まだ終わらないので」
後ろにいる平岡さんにはそう適当に答え、私はすぐにキーボードの上へと両手を置く
そんな私なりの〝話しかけないで欲しい〟という行動を彼は察せないのか、あるいは敢えて察さないのか
「胡桃ちゃんって頑張りやさんだよね」
平岡さんは平然と私に語りかけてきた。
「……別にそんな事ないです」
カタカタッ───
「いやいや、だって他の子絶対残業とかしないもんね。ほら、あの辺の女子達」
キーボードを打っていた手を止め平岡さんを見ると、平岡さんの指す〝あの辺〟というのは堂島さんや牧野さんを始め、派手めな女子達の席が集まる辺りだった