業務報告はキスのあとで

「あ、はい」

　ああ。なんだ、そういうことか。

　私は、手島さんの一言により彼の言葉は冗談だということにやっと気づき、冗談を鵜呑みにしてしまっていた自分に嫌悪感を抱いた。

　ただ、嫌悪感を抱いた理由というのはそれだけではなく、このチャラ男さんこと平岡さんも原因のひとつ。何故なら、今までの経験上こういう類の人は私には合わないのだ。いや、合わないというより〝嫌い〟と言った方が正しいかもしれない。

　ノリが軽くて、あらゆる社会にいる人で例えるなら、いつも決まった大人数のグループで騒いでいるようなタイプの人。

　私は、そういう人が本当に嫌いで、そういう人とは間違いなく合わないことを知っているし、私もそのノリに合わせられない事から、今までそういう人とは関わらないでいた。それなのに、そんな人が私の教育係だというのだから、今日はやはりついてない。

　だけど、やっと決めた就職先だ。こんな事を理由に捨てたくはない。

　ひとりで仕事ができるようになれば教育係なんかすぐにいなくなるはず。だから、一刻も早く一人前になれるよう、私が頑張ればいいだけ。

　そんな風に自分に言い聞かせていないとやっていけないような気がして、必死に自分に言い聞かせ続ける。

　私は、今から一人前に仕事ができるようになる日が待ち遠しくて仕方がなかった。


「それじゃあ、ひとまず社内案内でもするかな。あー、ええっと。小松さん、だよね。社内案内するから着いてきて」

「はい」