激愛
「お父さん、そのネクタイ・・・・」



「ああ、これか・・・誕生日にお母さんからもらったネクタイなんだが愛着が湧いて最近はこればっかり締めてるよ」



お父さんはにっこり微笑むと大事そうにネクタイを触った



その瞬間湧き上がる疑問とあたしの嫌いなお父さんの男の面が頭を掠める



そんなにお母さんからもらったネクタイが大事なの?なんで?



だったらなんで生きてる時お母さんを大事にしないでひとりにしたの?




今更、お母さんが亡くなった今、贈られたネクタイなんか大事にされてもなんにもなんないし



「瞳・・・・・?」




「あっ、なんでもない急いで食べちゃうね」




「いいからゆっくり食べなさい」




お父さんはたぶんあたしの様子が変だということに気付いたと思う



なんだか色んな思いが頭を掠めてそれからは無言のまま食事をした



目を合わせたくなかったし・・・・なによりネクタイを見たくなかった




何で今気が付いちゃったんだろう、っていうかなんでよりによって今日はそのネクタイ?



あたしは溜息を付きながらオムライスとパフェを怒涛の早さで食べ終えるとお父さんとふたり足早に店を後にする




空にはお母さんが亡くなった時と同じ満月が輝いていた夜だった
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