激愛
部屋を出るとエレベーターに二人で乗り込む



一階のボタンを押しゆっくりと動き出すと同時に龍さんがまっすぐ前を見たまま話し出した



「あ~お前んちってもしかして母さんいなかったりすんの?」




「えっ・・・・あの」




「あ、いや言いたくなかったら無理して「あたしが中二の頃に亡くなってるの」



「そうか・・・・」



龍さんはそうぽつりと呟いたまま何も言うことはなかった



もっと何か聞かれるかと思ったけど・・・逆にそれが嬉しいっていうか救われたような気がした




お母さんが病気で亡くなってるって言うと可哀そうとか大変ねとか哀れむような言葉を言われるのが普通だった



龍さんみたいなのははじめてでちょっと面食らったけど・・・



ふたりでマンションを出ると黒塗りの高級車が横付けにされているのが目に入ってきた



龍さんは車に駆け寄り運転手さんと一言二言話すとあたしに向かって駆け寄ってきた



「龍様!坊ちゃま!歩いていくなどとそんな」




「いいからお前は先に帰ってろ!何かあれば連絡する」



は・・・?坊ちゃま?って誰の事もしかして龍さんのこと?




運転手さんの慌てたような声が響いたかと思うと車は龍さんを置いてゆっくりと走り出した
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