激愛
「何言われたのか知らねえけどあんまり気にすんな・・・」



頬杖をついたまましっかり前を見据えて龍さんは突然そう言い放った



「え・・・・?」



「俺は財閥の御曹司に生まれたことを幸せだと思ったこともねえし不幸だと思ったこともねえ、むしろ運命だと思ってる」



溜息をひとつつくとすっかり夢の中の隼人の柔らかい髪をそっと撫でた



その仕草は愛おしいものを愛でる優しい瞳で慈愛に溢れていた



「俺は女を・・・・母親以外の女を信じてはいねえ」



「え?お母さん・・・・?」



あたしが問いかけると苦笑いを浮かべて龍さんは話し出した



「森田財閥の息子ってだけで媚びへつらういろんなやつが寄ってくる・・・中でも女は一番裏表がある」



裏表・・・・媚びへつらう輩を沢山見てきた龍さん



嫌な思いも沢山してきたんだろう、あなたはどんな思いを抱えているんだろう



想像もつかないけどなんだか苦しそうな龍さんに胸が痛くなった




「女なんて俺自身を見てはいねえ・・・女が見ているのは俺の家・・・森田財閥って権力だけ
だから女なんて都合の良いときだけベットに引きづり込んでその後は見向きもしねえ、なあ俺って最低だろ?」



龍さん・・・・なんて悲しそうな目であたしを見るの?




そんなに自分を苛めないで!知らず知らずのうちに涙が溢れていた頬を龍さんの指がそっと拭っていた



 
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