激愛
秀一君はポケットからスマートフォンを取り出すと慣れた手つきで画面をタップしている




しばらく操作を続けた後兄である龍さんにそのスマートフォンを黙って差し出した




怪訝な表情で見つめていた龍さんがスマホの画面を見つめているとみるみるうちに表情が変わっていく




傍らにいるあたしに見えない様にしているため傍にいても画面がなかなか見えない




あたしの視線を感じたらしい龍さんがちらっとあたしの方を見る



何を見ているのか知りたくて身を乗り出すと龍さんはスマホをさっと見えない様に隠した




「龍さん?なんで?ねえ見せてくれないの?」




「見ても驚かねえか?怖くねえのか」




ぎゅっとあたしの手を握る手に力が籠る



怖くないと言ったら嘘になるけど・・・・知らないことのほうがもっと怖いかも



それに・・・今のあたしは一人じゃない



龍さんがいれば・・・龍さんさえいてくれれば怖いことなんて何もない




この手を離したりしない限りどんなことにも立ち向かっていける





あたしは黙って頷くと龍さんの大きな手にそっと掌を乗せた




あたしが怖いのは龍さんと離れること、この温もりが無くなることだから・・・・
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