激愛
「瞳ちゃん、俺はこの頃楽しくって仕方ないんだよなんでか解る?」



あたしの傍に来ると覗き込むように顔を近づけて喜一君は言葉を発する



その表情はあたしが今まで見たこともないもので別人であるかの様に思えてならなかった




「わかんないって顔だね?俺は龍が苦しんでる姿を見るのが実に快感で仕方ないんだ、笑えると思わない?君ひとりがいなくなっただけでこのざまだ」




・・・・き、喜一君・・・・あなたって一体?



すると喜一君は耳元にそっと近づくと囁くように話し出す



それだけでぞわりと全身に嫌悪感が走ってその場に固まったまま喜一君の言葉を聞くしかなかった




「瞳ちゃんのこと・・・・めちゃくちゃにしたらあいつ俺のことどうすると思う?たぶん、そうだなあ」




龍一のことだから俺のこと殺しにくるかも?




それもまた面白いわね?楽しみ



そんなことを呟くと二人はこの別荘を後にした



あたしは呆然としたままその場に座り込む



龍さんが・・・あの龍さんがあたしがいなくなったせいで苦しんでいる!




涙が溢れて溢れて止まらなくて黒づくめの男達が監視をしているドアの向こうを見つめたまま
何時間も泣き暮らす




運命の婚約式がすぐそこに迫っているなんて思いもぜず弱いあたしはただ涙に暮れていた
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