激愛
「あんたねえ!腹減った腹減ったって言うことはそれだけ?マンションの前に倒れてるあんたを救急車呼んで病院まで連れて来たのはこのあたしなんだけど?有難うの一言もない訳?」




「ふっ・・・・威勢がいい女だな、ありがとさん?これでいいのか」



ふざけた口調で語る彼に自分が馬鹿にされたように感じて気分が悪かった



もっと何か言い返そうと思ったけどこんな奴ともう逢うことはないと思ったあたしは溜息をひとつついた



「命に別状はないみたいでよかったわね、肋骨が折れてる他は軽傷だって先生が言ってたわよ
詳しいことは先生に聞けばいいし・・・じゃあねあたし帰るからおだいじに」




一時もこんなところに居たくなかったあたしは踵を返しドアノブに手をかけた




「・・・・待て!」



すると彼のあたしを引き留める声が病室に響いた



掠れたような彼の声はあたしの動きを一瞬にして封じ込める



縫い付けられたように固まるあたしに彼は意外な言葉を口にした



「なんで俺を助けた?」



「は?なんで?なんでって血だらけで目の前に人が倒れてたら助けるのが当たり前じゃないの?」




「俺は・・・・ふっ・・・そうだな」




小さな彼の呟きにこの後なんて言っていいのかわからなかった



そんな微妙な雰囲気の中、突然聞こえてきたノック音とほぼ同時に開かれたドアに驚いたけれど何故かほっと胸を撫で下ろしていた
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