激愛
その我らが総長である総一郎が朱実を連れて来たのは突然の出来事だった



それは半年前の梅雨の時期、長雨が続いてバイクに乗れずに俺たちが空を眺めうっとうしく思っていた頃総一郎は溜まり場にひとりの女を連れて来た



俺たちの溜まり場でもある倉庫は初代の総長の持ち物でもある



かなりな資産家の家らしい、その頃からの暗黙の了解といおうかなんといおうか・・・



とにかくこの地に女が足を踏み入れたことは未だかつてない



その場所に総長が女を連れて来たのだ



溜まり場にいた奴等は目を見張り一瞬息を呑んだかのように静かになったかと思うとその場は騒然となった




幹部であるこの俺も目を疑う・・・何故なら総一郎は本気の女はつくらない




総長でいる間は本気の女はつくらない、そう常々口癖のように言っていたから・・・



総長である総一郎は男の俺から見てもなかなかのいい男




その夜限りの女は何人かいたらしいがそれも所詮その程度



一晩一緒に過ごしたら二度目は決してない




朝まで一緒に過ごすこともない




それが巷で噂されている神龍の総長の女事情




もちろん女が絡まれていても総長は決して助けたりしない




いや、助けられないと言った方がいいのかもしれない

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