激愛
心の底から笑っていない・・・作られたような貼り付けたような笑顔を浮かべる朱実と言うこの女




俺はどうにもこの女のことを好きにはなれなかった



時折猫なで声で誘うような目をするこの女を俺は心の底から信じてはいなかった



でも、朱実というこの女は思ったよりも早く神龍に馴染んでいく



地味な外見とは裏腹に明るくて天真爛漫な女に総長である総一郎は虜になっていった



それは幹部連中もしかり下の連中もそうだ



試験が近くなれば親身に勉強を教えてやり、時には神龍の奴等全員にクッキーを焼いて来たり




確実に俺たちの心を掴んでいった・・・・何故ならここにいる奴らは家庭環境があまりいいとは言えない奴等が多い




今思えばそれを逆手に取ったんだろう




手づくりのクッキーなんて作ってもらったことがない奴等ばかり



ある意味感動したと言っても過言ではない



「いつも送り迎えしてもらってるお礼だよ!よかったら食べてね」



そう言いながら綺麗にラッピングされたクッキーを皆に手渡した



総長の総一郎には弁当を作ってきたりもした




ふたりはとても仲が良さそうに見えてこのまま平和な時が続くのかと・・・・





この女のことが好きにはなれなかったけれど総一郎の笑顔が曇ることはないようにと俺は密かに願っていた








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