【短】退屈なX'mas
「俺もスペシャルイチゴがいいんだけど」
「……」
手が止まる。
まさか、ここでここまでKYで大人げないことを言ってくるとは。呆れた。
いや、まてまて。これって、確かに“スペシャル”だ。先輩が欲するのも無理ない。
私は、後輩だから、譲るべきものなの?
「…………」
動揺してものが言えない。
どうしよう。欲しい訳じゃなくて、あげてもいいけど、なんか先輩にだけはあげたくない。クリスマスペシャルイチゴショートケーキ。
「……じゃあ、じゃんけんしませんか?」
「じゃんけん?」
「はい。買った方がスペシャルイチゴを持ち帰っていいってことで、どうですか?」
「……今半分にすれば良くない?」
それは賛成できない。
だから、私は先輩を睨んだ。
「はぁ。融通の利かない奴だな、お前って」
先輩が呆れたようにため息をつく。
「は?それは先輩が大人げないからですよ。
私が欲してたタイミングに俺もほしー!なんで言いますか?
融通利かないのは先輩の方ですよ!」
またケンカへの入り口。いつものパターン。
けれど、今回は、言い返されなくて。
「……食い意地張ってんな」
しかしそのひとことが妙に図星をつかれていて。
「っ……!」
その場ですぐに開き直りが出来ず、今までの怒りだけが込み上げた。