【短】退屈なX'mas
「葵」
そんなとき、もう話し掛けられないと思われていた先輩に、声をかけられる。
先輩から下の名前で呼ばれたの、初めてな気がする。
いつもお前、って呼ばれてる。確か。
色々小恥ずかしくて、振り返って先輩を見ることは出来なかった。
「……ごめん、言い過ぎた」
「…………」
先輩がそんなことを言うのも、謝るのも、なんだか変で。いつもの先輩じゃなくて。
意地を張っていたのは私だ、と反省の念が沸き上がる。
「ごめん。」
「……」
私達の喧嘩は、あまりに幼稚。
ケーキごときで泣くなんて、私は、馬鹿だ。バカバカ。
恥ずかしい。
結局、先輩の方が大人だった。
「これ、お前にやるからさ」
「……」
私は、先輩の方に振り向くことが出来ない。
ずっと
何も話し掛けられない。
でも、先輩はずっとずっと、私の後ろに居てくれた。
ゴホン、とかの咳払いだとか、気配でそれは分かった。
私が次に口を開くまで。
「……、ごめんなさい」
「……」
「ケーキごときに、食い意地張って、私こそ子供で、ごめんなさい。」
何をアホみたいにむきになってたんだろう。
自分に腹が立つ。