犯罪彼女
「君は優先座席に座るべきだ」
セーラー服の女子は、女性に向かってそう言った。
サラリーマンは驚いたような表情を浮かべ、女性はこの女子を味方につけたと判断して汚い笑みを浮かべた。
「そもそも優先座席ってのは偉い人が座る場所じゃなくて、弱い人を救うための措置でしょ。言うなれば、車に跳ねられそうな子どもを助けるのと同じだ。
……見てみなよ、この人を。どう見たって臨月じゃん」
女子はサラリーマンに向かってそう言った。
この女性は臨月ではない。ただ太っているだけだと、ここにいる誰もがわかっている。
女子は口角を上げながら悪戯に笑っていた。