犯罪彼女
「君には今、三つの選択肢がある。
一、私の誘いを断って刑務所に戻る。
二、誘いを断って脱獄犯として生きる
三、顔を変えて私の仕事を手伝う。

さて、どれがいい?」

唐突過ぎる質問に答えられずにいた。
この女は何を考えているのだろうか。

「一つ目の選択肢は、まぁ犯罪者の末路としては妥当。
二つ目は、捕まるという恐怖に耐えなければならない。
三つ目は、ある程度の自由が許される。罪悪感やらそんな美しい心があれば潰れてしまうかもしれないけど」

そんな美しい心なんて、母親の胎内に残してきた。今はもう死んだけど、あの人は反吐が出るほど優しかったな。

「どうして俺を?」

「さぁ?
なんでかな、ピンと来たんだ。そんなもんじゃない?」

「俺はお前にあんな事をしたんだぞ」

「過去は振り返らない主義さ」

「俺はお前を堕としたくてうずうずしてる」

「出来るもんならどうぞ。
そんな奴がそばにいるのもまた一興、ってね」

妖しい女の目を見てゾクゾクした。


この美しく、頭のおかしい女のそばにいたいと思った。

そして隙あらば、あの日の続きをーー
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