犯罪彼女
林さんによって引き上げられた僕は涙を流した。
怖かった。
死を目前にした恐怖は、何にも勝った。
「君は本当に死にたいの?」
林さんが僕に尋ねる。僕は首を横に振った。
あんな怖い思いはもう嫌だ。
「そうだろうね。
君は死にたいんじゃない。逃げられない現実から逃避したいんだ。その手段が自殺だったんだ」
だけど、と林さんは続けた。
「君はまだ何もしていない。だから君の思いは誰にも伝わらない。
悲しみも怒りも憎しみも。何もかもがなかったことになる」
胸の中にある感情が、すべて。
僕の知る彼女の姿のすべて。
なかったことになんてさせたくない。