犯罪彼女
「君は大切な人を失ったよね。そしてその原因もわかっている。
君の大切な人は、弄ばれ、自ら命を絶った」

林さんは知っているのか?
話してもいない彼女……母のことを。

優しくて一途だった。
だから母はつけこまれてしまった。

僕は母の愛を裏切った父を許せなかった。
母を守れなかった自分が許せなかった。
どうすることも出来ない自分が許せなかった。

「君の父親は離婚後、この上なく幸せそうに暮らしているよ。新しい妻が出来て、不倫相手だって何人もいる。
そんな奴のために命を捨てて、君はそれでいいのかい? もっと望んでいることがあるんじゃないの?」

僕が自らの死よりも望んでいること。
それは確かにある。だけどその行為はとても非人道的なことだ。

「かのキリストも言ってたでしょ。姦淫…つまり浮気は許されないことだってね。今更君が人の道から外れたってお互い様なんじゃない?」

林さんの言葉の後押し。

僕は真っ暗な世界で一筋の光を見つけた気分になった。
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