犯罪彼女
「山口さん」

「よう」

山口さんは缶コーヒーを買う。ブラック。さすが先輩だ。

「今日は一段と機嫌悪いな」

「そうっすか?」

確かにイライラしているけど。

「もしかして彼女と約束か?」

「……まぁ」

って言ってももう8時だ。千葉との約束は7時。とっくにお断りの連絡は入れた。

「今日5時帰りだったもんなぁ」

山口さんは少し考えた素振りをした後、口を開いた。

「残業ばっかだったもんな。
よし、お前帰れ。帰って彼女んとこ行ってこい」

「いや、どうせこんな時間っすから」

「甘いぞお前。ちゃんと会わねえと振られんぞ。それで俺は何回振られたと……」

今年で三十路の山口さん。独身、彼女なし。
説得力がある。

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