犯罪彼女
「あいつら、お前に話聞きたいみたいだな」

「えー。面倒くさーい」

千葉は心底嫌そうな顔をする。
俺だって本当は嫌だけど仕方ない。被害者の義務みたいなもんだ。

「お前が聴取されてる間に車借りとくから、それで夜景でも見に行くか」

「夜景! なかなかいい趣味してるね!」

俺は知っている。千葉が光ものが好きだということを。
ペンギンを見るのだって、千葉にとってはあまり好ましくなかっただろう。ただ、俺に気を遣ってくれただけだと思う。

だから俺も気を遣ってやることにした。
夜景なんて大して興味もないけど、千葉が喜ぶならそれでいいだろう。

場所は大輔にでも聞けばわかるはずだ。
あいつはそういうことなら誰よりも詳しい。
街一番の物知りと言われる千葉よりも詳しい。

片想い中のあいつが、相手を喜ばせようと様々な場所のリサーチをしている。実際その相手と行ったことはないらしいけど、すごいと思う。
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