【完】狼様の最愛。
アオイ様……。
どこかで、聞いたことがある気がした。
思い出せない。
どこかで、聞いたはずなのに。
まるで黒い靄が、私の頭の中で渦巻いていて、その記憶を隠してるみたい。
「考えても、仕方ないか……。」
気づけば、午前零時。
赤坂村に来たのが、夕方五時。
夕飯を食べてから、どれだけボーッとしてたのか。
フッと眼を閉じた。
明日にでも、あの山に行こう。
そんなことを考えながら、私は眠りについた。
どこか遠いところで、狼の咆哮が聞こえた気がした。