【完】狼様の最愛。
力の抜けたアオイの腕から抜け出し、私はさっきまで崎野先生が座っていた椅子に腰を下ろした。
「誰があんな小鳥女に!! キスなんてするわけねえだろ!」
小鳥女って何だろ……。
ていうかアオイ、ちょっと誤解してる。
「アオイがするんじゃなくて、雛ちゃんがアオイにしたんだよ。今朝、バスの中でキスしてたの私見たんだから。」
「雛がぁ? ……それもありえねぇよ。」
なんて、真顔で言うアオイだけど……
「そんなの、わかんないじゃん……! ……雛ちゃん、もしかしたらアオイのこと好きなのかもしれないし……。」
「無いな。」
胸が痛くなるのを我慢して言ったっていうのに、アオイはたった一言で、私の言葉を跳ね返した。
「仮にもし雛が俺を好きとしても、俺は雛を恋愛対象では見れない。――一生な。」
アオイの蒼い眼が、私に向けられる。
相変わらず吸い込まれそうな淡い瞳。
心臓がドキッと高鳴る。