【完】狼様の最愛。
8.一片の沈んだ記憶
side アオイ
風が吹く。
冷たい風が。
「……アオイ様。」
十月。
甘栗悠の行方不明騒動から、早三週間が経った。
風も冷たくなって来ていた。
「……ヒルナの体調は?」
「……今は何ともないようだが、広場で休んでる。」
「そうか。」
ヒルナを蝕んでいく、俺の血液。
雛の命は、最初と比べ確実に短くなっている。
……そう思うと、クンは幸運だったのだと思う。
ヒルナはきっと、このままじゃ三年も生きられない。
二年、生きられるかも分からない。
最愛の目の前から、ヒルナが消えたとき。
最愛はどんな顔をするだろうか。