【完】狼様の最愛。
「お疲れか? マリンよ。」
最悪だ……。
近くから聞こえてきた声に、顔をしかめる。
「なんでここにいるんだよ……。旅に出かけたんじゃなかったのか……。」
「何々、お前の匂いを感じてな。」
体を起こす気にはなれず、視線だけをそちらに向ける。
いない、いない……
…………いた。
「俺に何の用だ……。」
そいつは木の上にいた。
カミリ
俺はコイツが、とてつもなく嫌いだ。
茶色い毛並みに軸が入っていて、丸くなった尻尾を振る姿は本当にウザい。
「何の用……いや、特に用は無いが。マリン、疲れておろう?」
「マリンって呼ぶな。クソ狐。」