【完】狼様の最愛。
現在栗鼠の姿をしているカミリは、この山を常に徘徊している化け狐だ。
朝昼晩問わず、あてもなく歩きまわっていて、どこに行くかはその時の気分次第。
俺以上の力を持っていて、姿だけなら何にでも化けられる。
そんな奴だから、〝しばらく旅に出る〟とか言って、最近は会うことも無かったのに……。
「少し前のお前達の騒動、見させてもらったぞ。」
低くなったカミリの声に、少しだけ肩が跳ねる。
「お前の隣にいた人間は、八年前の子か?」
「……あぁ。」
「おぉ、生きていたか。よかったよかった。あれは儂にでも助けられぬものだったからな。」
カミリが目の前へと落ちて来る。
そのカミリの眼は、本当に安堵を感じているようだった。