【完】狼様の最愛。
「ねぇ、マンタ。この切り株……アオイと誰の特等席なの?」
「は?」
「前言ってたじゃない。アオイ様とアイツしかダメなんだ、って。」
そう言った途端に、眼を明日の方向へと泳がすマンタ。
その姿にまた少し、胸の内が重くなった。
「そ、そうだったか……?」
隠し事は嫌い。
お母さんを思い出すから。
「お母さん、どこに行くの?」
「すぐ帰って来るから。」
「ねぇお母さん、どこ行くの?」
「待っててね、最愛。」
「お母さん!!」
海に沈んだお母さん。
結局あの日、お母さんはどこに行くのか教えてくれなかった。