【完】狼様の最愛。
そう言えば聞こえはいいかも知れない。
けど、違う。
私が思い出すのは決まって、お母さんが死んだ日のこと。
「海の中でずっと、お母さんが叫んでるの……。」
眼を閉じれば、直ぐに思い浮かぶ。
お母さんが必死に、私に手を伸ばしてる姿が。
「……そんな顔しないでよ。」
マンタが無表情で私を見ていた。
「私は大丈夫だから。」
それから少ししてアオイが起きてきて、この話は終わりとなった。
アオイは知らない、この話。
マンタだけがずっと、納得のいかない顔でいた。