【完】狼様の最愛。
私は事故にあった。
この赤坂村で。
眼を覚ましたのは十月の頭。
一ヶ月以上も眠り続けて、私は後遺症を負った。
記憶喪失。
この山の出来事だけじゃない。
それ以外にもいくつか、記憶を失った。
それは決まって、赤坂村での出来事。
どこの記憶を失ったのか、それさえも、わからない。
それに、私には事故の記憶さえない。
ただ、お母さんが泣いていた。
「どうして、自ら飛び出したの?」
私はトラックに轢かれた。
小さなトラックにだけど、死んでもおかしくないほど、酷い事故だったらしい。