【完】狼様の最愛。
「時が過ぎたからか……。」
車から荷物を下ろす、アイツの姿。
その時、ふと違和感に気づく。
昔から、笑顔が堪えない人間だった。
つまらないことで大笑いする人間だったのに、今のアイツは、どこか違う。
昔のアイツにそっくりなのに、似ても似つかない。
それでも……。
「アイツは戻って来た。」
俺達、たくさんの動物が住む赤坂村に。
俺は咆哮する。
大きな鳴き声を、山に轟かせる。
きっとアイツには聞こえない。
それでも良いと思った。
“最愛が帰って来た。”
それだけで、十分だ。