【完】狼様の最愛。
けれど亜希は許してはくれず、最愛に会うことは一度としてなかった。
そのまま、約一年が過ぎ。
最初は最愛に会うためだけの行動が、いつの間にか亜希に会うための言い訳になっていた。
「亜希、どこに行きたい?」
「哲郎さんとなら、どこへでも。」
きっとそれは亜希も気づいていたと思う。
それでもお互い、そのことは口にしなかった。
そうまるで、自覚してしまった途端消えてしまう儚い夢のように。
幸せだった。
幸せで、幸せで…………久々に生きた心地がしていた。
「なのに、気づいたら……。」
僕達は、海の中にいた。
海の中の車に。
生きているのか死んでいるのか分からない彼女を、ただ僕は抱きしめた。