【完】狼様の最愛。
目を覚ましたのが、つい三週間前だ。
見えた病院の天井に、一瞬八年前のあの日かと思った。
けれど隣にいたのは亜希じゃなく、冷たい目をした父さん一人。
その目は僕を蔑む目だった。
直ぐに父の言いたいことはわかった。
僕と亜希の、密かな密会。
僕達が起こした事件。
僕は、したいことさえ出来ないのか……。
事件については全て、会社に影響のないよう隠蔽されていた。
あの事件は、亜希が起こした無理心中になっていて。
そして、その亜希は……。
聞いたとき、頭が真っ白に。
海の中では一緒に死んでもいいと思ったのに、死んだのは彼女だけだった。