【完】狼様の最愛。
9.生きる者の心
side 山添最愛
「本当に、全てがバカバカしく思えたよ……。」
話す中本さんの目からは、涙が零れ落ちていた。
「結局僕は娘を殺しかけ、愛する人を殺したんだ。こんなの……人間のクズさ。」
思い残したことはない、とでも言うように中本さんは目を閉じる。
何だかその行動が、とてつもなくズルく見えて。
「……中本さんは、クズなんかじゃないです!」
「え……。」
「中本さんは、逃げてるだけじゃないですか!!」
思わず遠慮という言葉を無しに、そんなことを言ってしまった。
驚いた顔をする中本さん。
視界の端で、こっちに走って来てるアオイが映った。