【完】狼様の最愛。
お母さんは私に思い出してほしくなかったみたいだけど……。
ごめんね、お母さん……。
「私は、“お父さん”のことを忘れたくなかったよ。」
目を閉じたままの中本さんが、小さく笑う。
目からは、透明の雫がいくつもいくつも溢れ出て、止まるということを知らなかった。
「うん……。僕も、忘れはしなかったよ……亜希も、最愛も……。」
中本さんが私を連れて来たのは、きっとお母さんの代わりみたいなものなんだろう。
お母さんがいなくなって、お母さんとよく似た娘の私を傍におこうと考えたんだ。
……それはそれで、お母さんの代わりというのが少し悲しい気もするけど。
アオイはとっくに隣に来ていて、静かに私達の話を聞いていた。