【完】狼様の最愛。
今まで忘れていた記憶が溢れ出し、胸辺りが暖かく、何かが零れそうだ。
ふと胸元の服をギュッと掴み、目を閉じた。
閉じた瞼に映るのは、楽しそうに笑う私とアオイ達の姿。
動物姿の彼らは今と何も変わらず、優しい雰囲気を漂わせ私の周りに集まっていた。
――……これが、“仲間”なんだ。
「……俺は、お前を誰かの代わりとは思ってねえ。」
「……うん。」
「最愛は最愛だ。誰の代わりでもねえ。」
風を感じる。
十月の、少し肌寒い夜の風。
「俺は昔から、お前だけ愛してる。」
「今度は、もう二度と忘れるな。」