【完】狼様の最愛。
side カミリ
儂の背中に乗る、大柄にも情けない人間の男。
わざと険しい道を歩けば、時々震動でウッと唸りを上げる。
「……無様じゃの。」
儂が何と言おうと、この者に言葉は通じぬ。
それは儂も分かっていたので、今のは独り言のつもりじゃった。
なのにこやつは、まるで儂の言葉が分かったかのように小さく笑った。
「なんじゃい、起きておったのか。重い、自分で歩け人間。」
試しにそう言うが、
「……僕を嘲笑ってるの?」
……やっぱり言葉は噛み合わない。
一つ、小さく溜息。
話しかけることさえ阿呆らしい。