【完】狼様の最愛。
結局こやつは何の力も持たぬ、ただの人間か……。
仕方なしに止めていた足を、再び前へと動かせる。
にしても、あやつ等は大丈夫じゃろか?
山が心配なうえ先に行かせたが、今思えば失敗だったか。
マリンの傷は、こやつと並ぶ程に相当な傷を負っていた。
どこかで倒れていないか、気が気でない。
「……ねぇ、狐さん。」
なんてことを考えていれば、また背中の上の人間が口を開いた。
「……ごめん。」
「…………。」
「僕を、恨んでいるかい?」
……当たり前だろ。
恨んでいるとも。