【完】狼様の最愛。
大きな体をしていて、全身は真っ白。
だけど所々、傷や煤で赤黒くなっていて。
目は深い深い、蒼。
何もかも全て取り込んでしまうような、誰もが認める美しい蒼だった。
「んー……と。ちょっと待っててね、狼さん。」
そう言った少女は鞄を置いて、どこかへと走り出す。
狼はその姿を見つめ、溜息をついた。
「……待たない。」
血が出ている足を庇いながら、狼は体を起こして歩き出す。
元々これはこの山の上の方、崖から落ちて出来たもの。
まさかあんなところに人間がいるとは思わず、驚いたところで足を滑らせたのだった。