【完】狼様の最愛。
お祖母ちゃん家に着いて、車から降りたとき、どこからか視線を感じた。
私を蔑む視線じゃない。
どこか見守ってくれる、優しい視線。
あれはもしかしたら、本当に神様の視線だったのかも知れない。
その時、狼の咆哮が聞こえた。
距離が遠すぎて、はっきりとは聞こえない。
ただとても大きくて、その声は村中に響いた。
「懐かしい…。」
ふと、そう感じた。
「何をしているぅ、最愛。早く、入れぇ。」
後ろから、お祖父ちゃんに声をかけられ、掻き消すように、その記憶を仕舞った。