【完】狼様の最愛。
今、私の脳内を埋め尽くすのは。
手の甲に触れた、アオイの唇と
どこか寂しげに呟いた、マンタの言葉だけ。
「ワアォーーン!」
またどこかで、狼の咆哮。
何かを言ってるみたいなんだけど、距離が遠すぎて、何を言ってるかは分からない。
だけどなぜか、今日の咆哮は少し、寂しそうに感じた。
「狼さんも、何かあったの……?」
聞こえるはず無いのに、私は山に向かって問い掛けた。
返事は当然無い。
「……私も、寂しい……。」
お母さんが死んで、初めて、そう感じた。