【完】狼様の最愛。
「正門の前にバス停があるの知ってるか?」
頷く。
知ってるも何も、そこから来たんだし。
「その奥にさ、小さいけど森があんだよ。ネクタイ振り回して遊んでたら、ネクタイ飛んでって、さっき取りに行ったんだ。」
遥の服を見ると、首元のネクタイが無かった。
丘川高校では、男女ともネクタイ。
色が、青と赤に分かれてる。
「その森の中に、こりゃまた小さな池があってさ。見たらこの子犬が溺れてるんだよ。」
遥は、肩に乗ってる子犬をポンと撫でた。
子犬は嬉しそうに、クゥーンと鳴く。
「気持ちいい……。」
その鳴き声から流れてきた言葉は、そんな柔らかい言葉。