本当は怖い愛とロマンス
一カ月が過ぎ、俺は以前の自分の姿に戻っていた。
特定の恋人を作らず、ただダラダラと不特定多数の女と遊んでは一夜を共に過ごす日々が続く。
ある時はそれと反対に、一カ月後のドラマの主題歌を担当する事がきまり、ミュージシャンの顔に戻り、明け方近くまで音楽作りに没頭してスタジオにこもっていたり、俺はすっかりあの彼女からの手紙の事も忘れていた。
そして、彼女への想いや思い出も俺の中ではすっかり消え、過去になっていた。
新曲の完成に大詰めを迎え、深夜までスタジオにこもり、クタクタで家に帰った明け方、倒れるように俺はリビングのソファに沈み込んだ。
しばらく、女の家とスタジオに交互に泊まる日が続いていたせいか、掃除出来ずに散乱した家を見渡して、俺はため息をつきながら重い腰をあげて、久しぶりに掃除でもしようと思いたった。
床に散らばった服を拾いあげながら、Tシャツやデニムパンツのポケットの中の物を洗濯機に入れる前に入っていないかを確認しながら机に出して行く。
以前、タバコが入っていた事に気付かずそのまま洗濯機に放り込み最悪な目にあっていたからだ。
すると、椅子の上に乱暴にかけていたデニムパンツの中から見覚えのある封筒が床に落ちた。
それは読む事も捨てる事もなくあの日持ち帰った恵里奈からの俺に宛てた手紙だった。
俺は、その手紙を拾い上げるとしばらく見つめてから、近くにあったゴミ箱に捨てようとゴミ箱の上まで手紙を持っていった。
しかし、俺の中で捨てるくらいならば最後くらい彼女が俺に対してどう思っていたのか知りたいという変な気持ちが芽生えた。
どうせ、いまさら彼女の気持ちをしったところで、前のように彼女中心で全てを考える自分には戻れないと俺は解っていたからだ。
乱暴に封を破り捨てると、中身の紙を取り出した。
(嘘をついて、あなたを騙してごめんなさい。でも、私は、ずっと本木さんに渚さんと過ごすはずだった時間を取り戻してたかった。小さい頃、私は心臓が弱くて、移植のドナーが見つからずに死を待つしかなかった。そんな時、私の命を救ったのは事故にあって亡くなった渚さんだった。もちろん助かったときは、ドナーの情報なんてパパは教えてくれなかった。だから、子供ながらに大人になったら、その人に恩返しをするんだって誓ってた。だから渚さんがドナー提供者だと知った時、私が渚さんになって、あなたと過ごすはずだった時間を取り戻してあげたいという気持ちがますます大きくなった。顔まで渚さんと同じ様に整形した。恋人だった隼人にあなたに恨みをもっていたとはなされ、騙そうと手紙を出す計画を聞いた時、あなたを助けたいと思う気持ちで話しにのったからだった。そして、多分、渚さんも貴方と一緒にいたいという気持ちだったはずだと私が確かに感じたのは、あの店で初めて本木さんに出会って私は一瞬であなたに恋をしたから。心臓がいつもよりあなたの姿を見たとき、はっきりと早く動いていたのが解った。私は渚さんの為だって解っていたけれど、あなたと過ごす時間が長ければ長いほど、本当の私自身を好きになって欲しいと欲張りになってしまった。だから、私はあなたを拒絶し、周りの人たちも巻き込んで傷つけ、姿を消した。本当にごめんなさい。でも、あの日ライブで最後に本木さんに会って、本当の私の全てを話したいと思っていたの。本木さんにも謝りたかった、でも、もう会ってもくれないだろうと手紙を書きました。)
俺は、その手紙を読み終えると、怒りに任せて紙をくしゃくしゃにしてゴミ箱に捨てた。
彼女の中で渚の一部は確かに生きていると知った俺は、本当は喜ばしい事だってわかっていても、ますます頭の中の考えはぐちゃぐちゃで素直には喜べなかった。
読まなければ良かった。
と俺は思った。
そんな事を今更知ってどうすればいいのかも解らなかったからだ。
俺が確かに愛した昔の恋人の渚と渚に似た渚の一部を持った彼女。
心をかき乱して恋をして、拒絶されても手に入れたかったのはどっちの気持ちだったんだ?
特定の恋人を作らず、ただダラダラと不特定多数の女と遊んでは一夜を共に過ごす日々が続く。
ある時はそれと反対に、一カ月後のドラマの主題歌を担当する事がきまり、ミュージシャンの顔に戻り、明け方近くまで音楽作りに没頭してスタジオにこもっていたり、俺はすっかりあの彼女からの手紙の事も忘れていた。
そして、彼女への想いや思い出も俺の中ではすっかり消え、過去になっていた。
新曲の完成に大詰めを迎え、深夜までスタジオにこもり、クタクタで家に帰った明け方、倒れるように俺はリビングのソファに沈み込んだ。
しばらく、女の家とスタジオに交互に泊まる日が続いていたせいか、掃除出来ずに散乱した家を見渡して、俺はため息をつきながら重い腰をあげて、久しぶりに掃除でもしようと思いたった。
床に散らばった服を拾いあげながら、Tシャツやデニムパンツのポケットの中の物を洗濯機に入れる前に入っていないかを確認しながら机に出して行く。
以前、タバコが入っていた事に気付かずそのまま洗濯機に放り込み最悪な目にあっていたからだ。
すると、椅子の上に乱暴にかけていたデニムパンツの中から見覚えのある封筒が床に落ちた。
それは読む事も捨てる事もなくあの日持ち帰った恵里奈からの俺に宛てた手紙だった。
俺は、その手紙を拾い上げるとしばらく見つめてから、近くにあったゴミ箱に捨てようとゴミ箱の上まで手紙を持っていった。
しかし、俺の中で捨てるくらいならば最後くらい彼女が俺に対してどう思っていたのか知りたいという変な気持ちが芽生えた。
どうせ、いまさら彼女の気持ちをしったところで、前のように彼女中心で全てを考える自分には戻れないと俺は解っていたからだ。
乱暴に封を破り捨てると、中身の紙を取り出した。
(嘘をついて、あなたを騙してごめんなさい。でも、私は、ずっと本木さんに渚さんと過ごすはずだった時間を取り戻してたかった。小さい頃、私は心臓が弱くて、移植のドナーが見つからずに死を待つしかなかった。そんな時、私の命を救ったのは事故にあって亡くなった渚さんだった。もちろん助かったときは、ドナーの情報なんてパパは教えてくれなかった。だから、子供ながらに大人になったら、その人に恩返しをするんだって誓ってた。だから渚さんがドナー提供者だと知った時、私が渚さんになって、あなたと過ごすはずだった時間を取り戻してあげたいという気持ちがますます大きくなった。顔まで渚さんと同じ様に整形した。恋人だった隼人にあなたに恨みをもっていたとはなされ、騙そうと手紙を出す計画を聞いた時、あなたを助けたいと思う気持ちで話しにのったからだった。そして、多分、渚さんも貴方と一緒にいたいという気持ちだったはずだと私が確かに感じたのは、あの店で初めて本木さんに出会って私は一瞬であなたに恋をしたから。心臓がいつもよりあなたの姿を見たとき、はっきりと早く動いていたのが解った。私は渚さんの為だって解っていたけれど、あなたと過ごす時間が長ければ長いほど、本当の私自身を好きになって欲しいと欲張りになってしまった。だから、私はあなたを拒絶し、周りの人たちも巻き込んで傷つけ、姿を消した。本当にごめんなさい。でも、あの日ライブで最後に本木さんに会って、本当の私の全てを話したいと思っていたの。本木さんにも謝りたかった、でも、もう会ってもくれないだろうと手紙を書きました。)
俺は、その手紙を読み終えると、怒りに任せて紙をくしゃくしゃにしてゴミ箱に捨てた。
彼女の中で渚の一部は確かに生きていると知った俺は、本当は喜ばしい事だってわかっていても、ますます頭の中の考えはぐちゃぐちゃで素直には喜べなかった。
読まなければ良かった。
と俺は思った。
そんな事を今更知ってどうすればいいのかも解らなかったからだ。
俺が確かに愛した昔の恋人の渚と渚に似た渚の一部を持った彼女。
心をかき乱して恋をして、拒絶されても手に入れたかったのはどっちの気持ちだったんだ?