本当は怖い愛とロマンス
You Really Got A Hold On Me
一瞬の気の迷いで、全てを失う事もあると俺は思う。
本当に自分にとって大切な事とは何かを俺は、ずっと生きてきた中で考えていた。
でも、奈緒との別れの後、ノイローゼ一歩手前までスタジオにこもりきりになり、音楽と向き合った。
何も考えずに、別の事に集中していたかったからだ。
行方不明の彼女の事も奈緒の事も今だけは忘れていたかった。
どちらを選んだとしても、俺はきっと後悔する。
タバコを吸いながら、ソファに座って白紙の紙を見つめて難しい顔をする俺に、デビュー当時からコンビを組んでいるレコーディングスタッフの一人が、缶コーヒーを目の前に差出した。
「本木さん、朝から休憩も入れずにコン詰めて難しい顔して悩んでても、いい音はできないですよ。一息いれましょ?」
俺はその言葉に差し出された缶コーヒーを受け取り、一口飲んだ。
「そういえば、昨日の帰りスタジオの外の玄関で、若い女の子にICレコーダー本木さんに渡してくれって頼まれて。知り合いですか?」
そういいながら、ポケットから取り出したICレコーダーを俺の目の前に差し出した。
俺はそれを受け取ると、テーブルの上に置いてあったイヤホンで中身を確認した。
レコーダーの中身は、ピアノの音が入っており、俺はその音をしばらく聴いた瞬間に、イヤホンを乱暴に外して、急いでスタジオから飛び出した。
イヤホンから流れていたのは、ビートルズの「Yestarday」と言う曲だった。
この曲は私が、あなたの前で弾く時は永遠の別れと誓った時だけだと死んだ渚が昔言っていた。
レコーダーからうっすら聞こえたピアノの音に交じった泣き声は恵里奈の声だとすぐ解った。
恵里奈が俺と渚しか知らない約束をなぜ解ったのかは、彼女が渚の記憶を引き継いでいたからなのかもしれない。
こんな現実離れした仮説は、俺も信じたくはないが、もし、彼女が渚の記憶を少しでも引き継いでいるのなら、落ち込んだ渚なら必ずいた場所は…
海だ。
波の音が静かで大好きで落ち込んだ時は夜通し海にいたのを思い出した。
近くにある海までタクシーに乗って、急いで行き、近くの海岸沿いでタクシーを降りると久しぶりに見る背中が遠くに見える。
長い髪が海風に揺れ動き、波の音も静かに耳を通り抜けて行く。
ゆっくりと歩きながら、彼女に近寄り、俺は何も言わずに彼女の横に座った。
俺を見た瞬間、目を大きくさせて驚きその場から急いで立ち去ろうとする彼女の腕を咄嗟に掴んだ。
振り解こうとする彼女に俺は言った。
「なにしてる?」
彼女は下を向いたまま何も答えない。
「なんで、知ってる?渚にしかわからない場所になんでいるんだ?」
海を見つめながら、彼女に淡々と質問をする。
「私は、ただ…」
彼女は下を向き、言葉を選んでいた。
「それに俺に渡したレコーダーから聞こえたピアノの音も渚が弾いたピアノそのものだった…」
彼女の腕を自分の胸に引き寄せ、抱きしめた。
恵里奈は泣きながら、静かに頷いた。
本当に自分にとって大切な事とは何かを俺は、ずっと生きてきた中で考えていた。
でも、奈緒との別れの後、ノイローゼ一歩手前までスタジオにこもりきりになり、音楽と向き合った。
何も考えずに、別の事に集中していたかったからだ。
行方不明の彼女の事も奈緒の事も今だけは忘れていたかった。
どちらを選んだとしても、俺はきっと後悔する。
タバコを吸いながら、ソファに座って白紙の紙を見つめて難しい顔をする俺に、デビュー当時からコンビを組んでいるレコーディングスタッフの一人が、缶コーヒーを目の前に差出した。
「本木さん、朝から休憩も入れずにコン詰めて難しい顔して悩んでても、いい音はできないですよ。一息いれましょ?」
俺はその言葉に差し出された缶コーヒーを受け取り、一口飲んだ。
「そういえば、昨日の帰りスタジオの外の玄関で、若い女の子にICレコーダー本木さんに渡してくれって頼まれて。知り合いですか?」
そういいながら、ポケットから取り出したICレコーダーを俺の目の前に差し出した。
俺はそれを受け取ると、テーブルの上に置いてあったイヤホンで中身を確認した。
レコーダーの中身は、ピアノの音が入っており、俺はその音をしばらく聴いた瞬間に、イヤホンを乱暴に外して、急いでスタジオから飛び出した。
イヤホンから流れていたのは、ビートルズの「Yestarday」と言う曲だった。
この曲は私が、あなたの前で弾く時は永遠の別れと誓った時だけだと死んだ渚が昔言っていた。
レコーダーからうっすら聞こえたピアノの音に交じった泣き声は恵里奈の声だとすぐ解った。
恵里奈が俺と渚しか知らない約束をなぜ解ったのかは、彼女が渚の記憶を引き継いでいたからなのかもしれない。
こんな現実離れした仮説は、俺も信じたくはないが、もし、彼女が渚の記憶を少しでも引き継いでいるのなら、落ち込んだ渚なら必ずいた場所は…
海だ。
波の音が静かで大好きで落ち込んだ時は夜通し海にいたのを思い出した。
近くにある海までタクシーに乗って、急いで行き、近くの海岸沿いでタクシーを降りると久しぶりに見る背中が遠くに見える。
長い髪が海風に揺れ動き、波の音も静かに耳を通り抜けて行く。
ゆっくりと歩きながら、彼女に近寄り、俺は何も言わずに彼女の横に座った。
俺を見た瞬間、目を大きくさせて驚きその場から急いで立ち去ろうとする彼女の腕を咄嗟に掴んだ。
振り解こうとする彼女に俺は言った。
「なにしてる?」
彼女は下を向いたまま何も答えない。
「なんで、知ってる?渚にしかわからない場所になんでいるんだ?」
海を見つめながら、彼女に淡々と質問をする。
「私は、ただ…」
彼女は下を向き、言葉を選んでいた。
「それに俺に渡したレコーダーから聞こえたピアノの音も渚が弾いたピアノそのものだった…」
彼女の腕を自分の胸に引き寄せ、抱きしめた。
恵里奈は泣きながら、静かに頷いた。