本当は怖い愛とロマンス
警察官の男はジャケットの内ポケットから写真を取り出し、その写真を俺の前に突き出した。
「この女に見覚えは?」
俺はその写真を見た瞬間にゴクリと唾を飲み込み、答えた。
「彼女は学生時代の後輩です…」
「私達が調べたところによると今日の2時頃に表参道の喫茶店で貴方と接触して、親しげに話した後、急に口論になり店を出ていったという話を何人もの目撃者から証言を聞いたのですが、本当に彼女とはただの後輩ですか?」
警察感は俺の目の奥の嘘を見透かすかのようにじっと様子を伺っていた。
「はい…彼女と俺はなんの関係もありません。」
念を押すように俺がそう言うと、くるりと表情を変え、満面の笑顔で警察官は言った。
「そうですか。また何かあれば話を伺うかもしれませんが…その時はお願いします。」
ヒソヒソと話をしながら警察感がドアを開け出て言った後、俺はどうしようもなく身体が震えていた。
もしかしたら、奈緒が恵里奈を…?
まさかそんなはずはないと信じつつも、さっきの現実味を帯びた出来事が一層、真実味をましそんな疑いさえも頭に浮かばせた。
自分がした事でそこまで奈緒を追い詰め、苦しめたかと思うと、頭を抱えずにはいれなかった。
そして、俺はベッドに横たわり眠る恵里奈を見つめながら、この現実が自分のした事への報いだと思うと、罪悪感で胸が押しつぶされそうだった。
「本木君、今、ちょっとだけいいかな?」
そう言って、病室のドアを開けて入ってきたのは西岡だった。
俺を外に連れ出し、自販機で買ってきたコーヒーの片方を手渡すと話を切り出した。
「回りくどい話をするのは、俺は苦手だから、単刀直入に聞くよ。こんな事を今の君の状況で聞くのは酷だけど、恵里奈をどう思ってる?」
西岡はコーヒーを一口飲んで、天井を見つめながら、俺にそう聞いた。
「俺は、彼女を大切に思ってます。もちろん…誰よりも愛してます。」
すると、西岡は少し口元を緩ませながら、俺に言った。
「昔、君に話した事があったね。君は昔の俺を見ているようで助けたくなるって。あれは、僕の話じゃない。」
俺はその言葉に顔をあげる。
「君はね、昔の谷垣にそっくりなんだよ。死んだ人を想い、死んだ人になり代わる人間に未来を見ようとする。谷垣も君と同じで、昔愛する人を亡くしたんだ。だから、その愛する人の面影を受け継いだ恵里奈に異常なまでの愛情をずっと注いできた。恵里奈が成長する度に、谷垣は愛する人に近づいていく恵里奈と過ごす事に幸せを見出してた。」
「それって…」
「ああ…君が考えてる通りだよ。谷垣は、恵里奈に娘以上の愛情を注いでるって事さ。顔が変わった今も、谷垣の愛情はきっと変わってはいない。そして、それが異常だって恵里奈は解って、谷垣を避けて逃げるように家かを出て行った。最初は、見てられないくらい谷垣は荒れていた。」
飲み終わった缶コーヒーをゴミ箱に投げ捨てると西岡は俺の方を見て言った。
「俺は、昔から谷垣をずっと側で見てきた。宇野君が君を見ていたのと同じ気持ちでね。だから、もう何年も前から終わりのないゴールをいつまでもずっと探してる気分さ。きっと、もうゴールなんて存在するわけが無いって気づいてるのに抜け出す事ができない。」
西岡は笑いながらそういうと、最後に「まるで、俺のしてる事は悲しい追いかけっこだ」と自分を皮肉った。
「この女に見覚えは?」
俺はその写真を見た瞬間にゴクリと唾を飲み込み、答えた。
「彼女は学生時代の後輩です…」
「私達が調べたところによると今日の2時頃に表参道の喫茶店で貴方と接触して、親しげに話した後、急に口論になり店を出ていったという話を何人もの目撃者から証言を聞いたのですが、本当に彼女とはただの後輩ですか?」
警察感は俺の目の奥の嘘を見透かすかのようにじっと様子を伺っていた。
「はい…彼女と俺はなんの関係もありません。」
念を押すように俺がそう言うと、くるりと表情を変え、満面の笑顔で警察官は言った。
「そうですか。また何かあれば話を伺うかもしれませんが…その時はお願いします。」
ヒソヒソと話をしながら警察感がドアを開け出て言った後、俺はどうしようもなく身体が震えていた。
もしかしたら、奈緒が恵里奈を…?
まさかそんなはずはないと信じつつも、さっきの現実味を帯びた出来事が一層、真実味をましそんな疑いさえも頭に浮かばせた。
自分がした事でそこまで奈緒を追い詰め、苦しめたかと思うと、頭を抱えずにはいれなかった。
そして、俺はベッドに横たわり眠る恵里奈を見つめながら、この現実が自分のした事への報いだと思うと、罪悪感で胸が押しつぶされそうだった。
「本木君、今、ちょっとだけいいかな?」
そう言って、病室のドアを開けて入ってきたのは西岡だった。
俺を外に連れ出し、自販機で買ってきたコーヒーの片方を手渡すと話を切り出した。
「回りくどい話をするのは、俺は苦手だから、単刀直入に聞くよ。こんな事を今の君の状況で聞くのは酷だけど、恵里奈をどう思ってる?」
西岡はコーヒーを一口飲んで、天井を見つめながら、俺にそう聞いた。
「俺は、彼女を大切に思ってます。もちろん…誰よりも愛してます。」
すると、西岡は少し口元を緩ませながら、俺に言った。
「昔、君に話した事があったね。君は昔の俺を見ているようで助けたくなるって。あれは、僕の話じゃない。」
俺はその言葉に顔をあげる。
「君はね、昔の谷垣にそっくりなんだよ。死んだ人を想い、死んだ人になり代わる人間に未来を見ようとする。谷垣も君と同じで、昔愛する人を亡くしたんだ。だから、その愛する人の面影を受け継いだ恵里奈に異常なまでの愛情をずっと注いできた。恵里奈が成長する度に、谷垣は愛する人に近づいていく恵里奈と過ごす事に幸せを見出してた。」
「それって…」
「ああ…君が考えてる通りだよ。谷垣は、恵里奈に娘以上の愛情を注いでるって事さ。顔が変わった今も、谷垣の愛情はきっと変わってはいない。そして、それが異常だって恵里奈は解って、谷垣を避けて逃げるように家かを出て行った。最初は、見てられないくらい谷垣は荒れていた。」
飲み終わった缶コーヒーをゴミ箱に投げ捨てると西岡は俺の方を見て言った。
「俺は、昔から谷垣をずっと側で見てきた。宇野君が君を見ていたのと同じ気持ちでね。だから、もう何年も前から終わりのないゴールをいつまでもずっと探してる気分さ。きっと、もうゴールなんて存在するわけが無いって気づいてるのに抜け出す事ができない。」
西岡は笑いながらそういうと、最後に「まるで、俺のしてる事は悲しい追いかけっこだ」と自分を皮肉った。