本当は怖い愛とロマンス
涙のキス
「俺は、ただ、美奈にもう一度、愛されたかっただけなんだ…」
そう谷垣は呟いた。
愛する人を失い、愛情の行き場を失った末、愛する人の影を恵里奈に求めてしまったと谷垣は俺に言った。
俺は泣きじゃくる谷垣の姿を見た時、自分自身と重ねていた。
二度と会えないとわかっているから会いたくて、会いたいと願えば願うほどその人が居ない現実を知っているから苦しくなる。
違う誰かを好きになろうとする度に亡くした人と比べてしまう自分がいる。
もういない人を超えられる存在なんて現れやしないとわかってても、どこかで自分が愛され、寂しさや孤独の苦しみから救われたいと思うからだ。
俺も、ずっとその感情の中でもがき苦しんでいたからこそ、今の谷垣の気持ちが手にとるようにわかった。
「渚が死んだ時、俺を救ったのはあんただ。今のミュージシャンの俺を作ったのはあんただ!そのあんたがこのざまかよ!」
谷垣は、生気を失った俺を救った。
渚が死んだ後、デビューが決まりミュージシャンとして今からだと言う時だったにも関わらず、俺は音楽を辞めようと思っていた。
その時、谷垣は当時新人社員だった。そんな自分がスカウトした俺が初めて新人ミュージシャンとして世に出ようとする目前だったはずなのに、辞めるかもしれないといいだした俺に酒を飲もうと誘った。
引き留める素振りもせず、ただひたすらに呑み続ける谷垣に俺はあの時聞いた。
(俺は、これからなんの為に音楽を続ければいい?誰の為に頑張ればいい?)
泣きながら、俺は全ての事に絶望している胸のうちを谷垣にぼやいた。
谷垣は笑って俺に言った。
(お前は今のお前のままでいい。お前は自分の為に生きればいいんだ。誰かの為なんて頑張る必要なんてないだろ?お前の夢はお前だけのものだ。誰かのものなんかじゃない。その才能は、お前が生かすも殺すも自由だろ?もし、心変わりして才能を生かしたくなったならいつでも俺がなんとかしてやる。俺がいつでもお前を絶対に輝かせてやる。)
俺はその言葉に救われて、音楽を辞めずに今までミュージシャンをやってこれたんだ。
谷垣は俺の暗い世界に一筋の光をくれた人だった。
眩しくて、いつも自信に満ち溢れていた谷垣が今、俺の目の前で情けなく泣きじゃくっている。
「そんな昔の俺は死んだよ…随分前から俺には何も残ってなんかいなかった。」
そう言うと、谷垣は少しづつ恵里奈に近づいていくと、人工呼吸器の前で足を止める。
「皆幸せだけに目を向けようとするが、それは本当の幸せじゃない。自分だけが幸せなら、他人の悲しみには知らんふりさ。流れてる時間が幸せであるほど、忘れていくのが人間だと思わないか?俺は、ずっと幸せなんかじゃなかった。幸せに憧れていただけだったんだ。」
そう言うと、谷垣は恵里奈が繋がれている人工呼吸器機のスイッチをオフにした。
俺は慌てて、谷垣を押さえつけ、殴りつけるとスイッチをオンに戻す。
「人間は死んだらお終いだ…全部がお終いなんだ。引き返す事もリセットする事も出来ない。苦しみの中でもがき続けるしかない。」
谷垣は床に転げながらそう呟いた。
俺は、谷垣の胸ぐらを掴み、身体を起こすと言った。
「死んだら終わりだろうが、死んだ人間はあんたの様になる事は望んでなんかいないだろうよ。もう自分が一番不幸だって面ぶら下げるのもいい加減にしろ。一番可哀想なのは、愛されてるフリされて、本当の愛情を知らずにそだった恵里奈だよ。」
谷垣の身体を再び突き放すと、その反動で身体は床に叩きつけられていた。
そう谷垣は呟いた。
愛する人を失い、愛情の行き場を失った末、愛する人の影を恵里奈に求めてしまったと谷垣は俺に言った。
俺は泣きじゃくる谷垣の姿を見た時、自分自身と重ねていた。
二度と会えないとわかっているから会いたくて、会いたいと願えば願うほどその人が居ない現実を知っているから苦しくなる。
違う誰かを好きになろうとする度に亡くした人と比べてしまう自分がいる。
もういない人を超えられる存在なんて現れやしないとわかってても、どこかで自分が愛され、寂しさや孤独の苦しみから救われたいと思うからだ。
俺も、ずっとその感情の中でもがき苦しんでいたからこそ、今の谷垣の気持ちが手にとるようにわかった。
「渚が死んだ時、俺を救ったのはあんただ。今のミュージシャンの俺を作ったのはあんただ!そのあんたがこのざまかよ!」
谷垣は、生気を失った俺を救った。
渚が死んだ後、デビューが決まりミュージシャンとして今からだと言う時だったにも関わらず、俺は音楽を辞めようと思っていた。
その時、谷垣は当時新人社員だった。そんな自分がスカウトした俺が初めて新人ミュージシャンとして世に出ようとする目前だったはずなのに、辞めるかもしれないといいだした俺に酒を飲もうと誘った。
引き留める素振りもせず、ただひたすらに呑み続ける谷垣に俺はあの時聞いた。
(俺は、これからなんの為に音楽を続ければいい?誰の為に頑張ればいい?)
泣きながら、俺は全ての事に絶望している胸のうちを谷垣にぼやいた。
谷垣は笑って俺に言った。
(お前は今のお前のままでいい。お前は自分の為に生きればいいんだ。誰かの為なんて頑張る必要なんてないだろ?お前の夢はお前だけのものだ。誰かのものなんかじゃない。その才能は、お前が生かすも殺すも自由だろ?もし、心変わりして才能を生かしたくなったならいつでも俺がなんとかしてやる。俺がいつでもお前を絶対に輝かせてやる。)
俺はその言葉に救われて、音楽を辞めずに今までミュージシャンをやってこれたんだ。
谷垣は俺の暗い世界に一筋の光をくれた人だった。
眩しくて、いつも自信に満ち溢れていた谷垣が今、俺の目の前で情けなく泣きじゃくっている。
「そんな昔の俺は死んだよ…随分前から俺には何も残ってなんかいなかった。」
そう言うと、谷垣は少しづつ恵里奈に近づいていくと、人工呼吸器の前で足を止める。
「皆幸せだけに目を向けようとするが、それは本当の幸せじゃない。自分だけが幸せなら、他人の悲しみには知らんふりさ。流れてる時間が幸せであるほど、忘れていくのが人間だと思わないか?俺は、ずっと幸せなんかじゃなかった。幸せに憧れていただけだったんだ。」
そう言うと、谷垣は恵里奈が繋がれている人工呼吸器機のスイッチをオフにした。
俺は慌てて、谷垣を押さえつけ、殴りつけるとスイッチをオンに戻す。
「人間は死んだらお終いだ…全部がお終いなんだ。引き返す事もリセットする事も出来ない。苦しみの中でもがき続けるしかない。」
谷垣は床に転げながらそう呟いた。
俺は、谷垣の胸ぐらを掴み、身体を起こすと言った。
「死んだら終わりだろうが、死んだ人間はあんたの様になる事は望んでなんかいないだろうよ。もう自分が一番不幸だって面ぶら下げるのもいい加減にしろ。一番可哀想なのは、愛されてるフリされて、本当の愛情を知らずにそだった恵里奈だよ。」
谷垣の身体を再び突き放すと、その反動で身体は床に叩きつけられていた。