本当は怖い愛とロマンス
朝目覚めると、久しぶりに夢を見て泣いていた。
何の夢だったのかは、目が覚めた瞬間に忘れてしまった。
でも、とても悲しいと言う感情だけは、はっきりと心には残っていた。
寝起きの激しい頭痛に耐えかねて、俺は家に置いてあった頭痛薬を慌てて、水で流し込むように飲んだ。
リビングに行くとマスコミの人間が朝からうるさいくらいにチャイムを鳴り響かせ、週刊誌の記者が取材目当てで家の電話を何度も鳴らしていた。
テレビをつければ、ワイドショーは俺のゴシップニュースで持ちきりだった。
溜息をつきながら、リモコンをテーブルの上に置いた。
ベッドルームに戻ると、まだ事故当時から目覚めていないベッドに眠る恵里奈を見つめ、俺は優しく髪をとかす。
俺の心は、恵里奈が側にいると言う事が感じられるだけで優しい気持ちになれた。
さっきまでの現実へのイライラした気持ちが嘘みたいに消えて行く。
不思議だった。
ずっと、恵里奈が俺の側にさえいてくれれば…俺の人生に音楽なんていらないなんて馬鹿な考えが浮かんだその時だった。
「佳祐、開けてくれ!」
裏口からの孝之の声に俺は一気に現実に引き戻された。
ドア越しにもう一度声が孝之だけだと言うのを確認し、裏口のドアを開けると、ドアを開けた瞬間、いきなり俺の姿を見るなり、孝之は俺を強く抱きしめた。
「何すんだよ!」
突然の孝之の行動に俺は慌てて、身体を突き放す。
すると、孝之は鼻水をすすりながら、涙を流して泣いていた。
「良かった…佳祐がなんともなくて。良かったよ。」
孝之の足元を見ると、店で使っているスニーカーにボロボロのスウェット姿、どう見てもテレビを見て、慌てて自分の家から飛び出してきたのは明らかだった。
「俺、ニュースで佳祐の家で人が刺されたって見て、佳祐も事件に巻き込まれたんじゃないかって心配で。」
俺はその言葉に大きな溜息をついて、落ちつかせる為にリビングのソファーに座らせると、自分の分と孝之のコーヒーを淹れ、目の前に置いた。
コーヒーを一口飲むと、俺は孝之に言った。
「俺さ、お前が来る前、音楽辞めようかなって、一瞬考えてた…」
下を向いていた孝之が俺の方を怒ったように睨みつけて言った。
「事務所に言われたのか?こんな事で看板ミュージシャンの佳祐が責任とることはないだろ!」
孝之の言葉に苦笑いしながら、首を横に振る。
「違うんだよ…俺が自分でそう思ったんだよ。俺の精神安定剤は、ずっと音楽を作る事だった。音楽の中で、俺は自分の頭の中で描いていた理想の人生を作ってたんだよ。全ての感情を歌でぶつけてさ。でも…今は違うんだ。」
孝之の顔がさっきとは違う怒りが込み上げてきたのか、みるみると強張っていくのが俺には、はっきりと解った。
何の夢だったのかは、目が覚めた瞬間に忘れてしまった。
でも、とても悲しいと言う感情だけは、はっきりと心には残っていた。
寝起きの激しい頭痛に耐えかねて、俺は家に置いてあった頭痛薬を慌てて、水で流し込むように飲んだ。
リビングに行くとマスコミの人間が朝からうるさいくらいにチャイムを鳴り響かせ、週刊誌の記者が取材目当てで家の電話を何度も鳴らしていた。
テレビをつければ、ワイドショーは俺のゴシップニュースで持ちきりだった。
溜息をつきながら、リモコンをテーブルの上に置いた。
ベッドルームに戻ると、まだ事故当時から目覚めていないベッドに眠る恵里奈を見つめ、俺は優しく髪をとかす。
俺の心は、恵里奈が側にいると言う事が感じられるだけで優しい気持ちになれた。
さっきまでの現実へのイライラした気持ちが嘘みたいに消えて行く。
不思議だった。
ずっと、恵里奈が俺の側にさえいてくれれば…俺の人生に音楽なんていらないなんて馬鹿な考えが浮かんだその時だった。
「佳祐、開けてくれ!」
裏口からの孝之の声に俺は一気に現実に引き戻された。
ドア越しにもう一度声が孝之だけだと言うのを確認し、裏口のドアを開けると、ドアを開けた瞬間、いきなり俺の姿を見るなり、孝之は俺を強く抱きしめた。
「何すんだよ!」
突然の孝之の行動に俺は慌てて、身体を突き放す。
すると、孝之は鼻水をすすりながら、涙を流して泣いていた。
「良かった…佳祐がなんともなくて。良かったよ。」
孝之の足元を見ると、店で使っているスニーカーにボロボロのスウェット姿、どう見てもテレビを見て、慌てて自分の家から飛び出してきたのは明らかだった。
「俺、ニュースで佳祐の家で人が刺されたって見て、佳祐も事件に巻き込まれたんじゃないかって心配で。」
俺はその言葉に大きな溜息をついて、落ちつかせる為にリビングのソファーに座らせると、自分の分と孝之のコーヒーを淹れ、目の前に置いた。
コーヒーを一口飲むと、俺は孝之に言った。
「俺さ、お前が来る前、音楽辞めようかなって、一瞬考えてた…」
下を向いていた孝之が俺の方を怒ったように睨みつけて言った。
「事務所に言われたのか?こんな事で看板ミュージシャンの佳祐が責任とることはないだろ!」
孝之の言葉に苦笑いしながら、首を横に振る。
「違うんだよ…俺が自分でそう思ったんだよ。俺の精神安定剤は、ずっと音楽を作る事だった。音楽の中で、俺は自分の頭の中で描いていた理想の人生を作ってたんだよ。全ての感情を歌でぶつけてさ。でも…今は違うんだ。」
孝之の顔がさっきとは違う怒りが込み上げてきたのか、みるみると強張っていくのが俺には、はっきりと解った。