本当は怖い愛とロマンス
「あの子か?」
孝之の口ぶりは明らかに恵里奈の事を言っている事は解っていた。
目の前のテーブルを思いっきり両手で叩くと、孝之は言った。
「あの子に出会って、俺達三人はどうなったんだよ?あの子に出会わなきゃ、波風なんか立たずに未だに幸せに上手くやってただろ?」
確かに、恵里奈に出会わなきゃ俺は今も昔と変わらない自分の人生を送っていた。
傷ついたり、悩んだり、知らなくて良かった事にも気付かないまま、俺はただ楽しい事や自分の都合のいい事に目を向けて、孝之の言う通り、幸せだったのかもしれない。
そう考え、うまくいかない現実の全てを彼女との出会いのせいにしていた事もあった。
でも、色々な事実を目にして行く上で俺は思った。
そんな嘘で固めた幸せが本当の幸せと言えるのだろうか。
きっと、人の痛みに気付けず、誰を愛する事もなく、傷つく事を避け続けていたに違いない。
「今朝、店に警察が来た…奈緒の事聞かれたよ…昨日から連絡がとれないんだ。佳祐、お前、奈緒となんかあったのか?このままじゃ奈緒…」
俺は孝之の言葉を最後まで聞かずにソファから立ち上がった俺は身を乗り出し、目の前の孝之の胸倉に掴みかかる。
「そんな事は俺も解ってんだよ!」
俺は唇を強く噛み締め、感情が溢れ出しそれ以上の言葉がうまく出てこない。
警察が現れ奈緒の事を聞かれた日、あの日奈緒を突き放し傷つけた自分に酷く責任を感じた。
もしかしたら…と奈緒を疑ってしまう自分が嫌だった。
そして、奈緒と恵里奈の間で揺れ動く俺の心はメトロノーム様に揺れ動いて決断を狂わせる。
「佳祐、迷うって事は、自分の心にも迷いがあるっていうことなんだよ。俺は、佳祐が後悔しない幸せな答えを選ぶ事を祈ってるよ。俺は、佳祐が幸せならそれでいいからさ。」
孝之はそういうと、ゆっくりと俺の胸倉から手を離して家を出て行った。
目には涙が浮かんでいた。
孝之にとって、俺は男だけど好きな人で、その好きな人の選択肢の気持ちの中に自分の存在がないという事が解っていたからだろうか。
はっきりと孝之の中で区切りをつけた言葉を聞いたとしても、まだはっきりと好きな気持ちは少しも癒えていない。
俺が傷つけても孝之が傷つける言葉を言わないのは、俺がまだ…
俺は、リビングのドアノブに手をかけた孝之に言った。
「本当にごめん…。ごめん。」
俺は、ポツリと孝之に呟いた。
孝之は口元を緩ませると、それ以上何も言わずに出て行った。
孝之の口ぶりは明らかに恵里奈の事を言っている事は解っていた。
目の前のテーブルを思いっきり両手で叩くと、孝之は言った。
「あの子に出会って、俺達三人はどうなったんだよ?あの子に出会わなきゃ、波風なんか立たずに未だに幸せに上手くやってただろ?」
確かに、恵里奈に出会わなきゃ俺は今も昔と変わらない自分の人生を送っていた。
傷ついたり、悩んだり、知らなくて良かった事にも気付かないまま、俺はただ楽しい事や自分の都合のいい事に目を向けて、孝之の言う通り、幸せだったのかもしれない。
そう考え、うまくいかない現実の全てを彼女との出会いのせいにしていた事もあった。
でも、色々な事実を目にして行く上で俺は思った。
そんな嘘で固めた幸せが本当の幸せと言えるのだろうか。
きっと、人の痛みに気付けず、誰を愛する事もなく、傷つく事を避け続けていたに違いない。
「今朝、店に警察が来た…奈緒の事聞かれたよ…昨日から連絡がとれないんだ。佳祐、お前、奈緒となんかあったのか?このままじゃ奈緒…」
俺は孝之の言葉を最後まで聞かずにソファから立ち上がった俺は身を乗り出し、目の前の孝之の胸倉に掴みかかる。
「そんな事は俺も解ってんだよ!」
俺は唇を強く噛み締め、感情が溢れ出しそれ以上の言葉がうまく出てこない。
警察が現れ奈緒の事を聞かれた日、あの日奈緒を突き放し傷つけた自分に酷く責任を感じた。
もしかしたら…と奈緒を疑ってしまう自分が嫌だった。
そして、奈緒と恵里奈の間で揺れ動く俺の心はメトロノーム様に揺れ動いて決断を狂わせる。
「佳祐、迷うって事は、自分の心にも迷いがあるっていうことなんだよ。俺は、佳祐が後悔しない幸せな答えを選ぶ事を祈ってるよ。俺は、佳祐が幸せならそれでいいからさ。」
孝之はそういうと、ゆっくりと俺の胸倉から手を離して家を出て行った。
目には涙が浮かんでいた。
孝之にとって、俺は男だけど好きな人で、その好きな人の選択肢の気持ちの中に自分の存在がないという事が解っていたからだろうか。
はっきりと孝之の中で区切りをつけた言葉を聞いたとしても、まだはっきりと好きな気持ちは少しも癒えていない。
俺が傷つけても孝之が傷つける言葉を言わないのは、俺がまだ…
俺は、リビングのドアノブに手をかけた孝之に言った。
「本当にごめん…。ごめん。」
俺は、ポツリと孝之に呟いた。
孝之は口元を緩ませると、それ以上何も言わずに出て行った。